SEEDS-II（Space Engineering Education Satellite II）はSEEDSの後継機であり，10cm立方で1kgのCubeSatです．その打ち上げまでの概要は以下の表の通りです．なお，正式名称はSEEDS-IIなのですが，1号機が打ち上げ失敗だったことや言いやすさという点から，普段は「SEEDS」と呼んでいます．

SEEDS-IIはSEEDSと同様，アップリンクコマンドを受信してフライトマネージメントを行うサブシステムFMRが衛星システム全体をマネージメントするという設計思想で開発しています．SEEDSからの主な改修点は以下の通りです．

1. 太陽電池セルの変更(Si系→Gs系)および，それに伴う発電効率の上昇による電力増加を消費するためのシャント回路の増設
2. 太陽電池セル変更に伴う，太陽電池搭載基板の変更およびデータポート位置の変更
3. CWのテレメトリフォーマットの変更
4. 文字パケットの機能拡張（半角英数字16文字→半角カナ・英数字120文字）
5. デジトーカの機能拡張（英語の音声のみ，計60秒→英語の音声・SSTV信号・日本語の音声(小学生)，計120秒）
6. マイクロフィルムの搭載

SEEDS-IIのミッションはSEEDSと同じで，以下の表の通りです． Minimum Mission モールス信号によるハウスキーピングデータの送信 Middle Mission FMパケット(AX.25プロトコル)を用いたセンサデータの送信 センサデータ(ジャイロ，地磁気センサ等)を用いた姿勢解析 Advanced Mission デジトーカによる音声ダウンリンク実験 SSTV信号を用いたアナログ画像ダウンリンク実験 右の写真は開発の様子のスライドショーです．開発は10か月と短期間でしたが，輸出前には，地上局および衛星局の落成検査も受け（この段階では検査未了．打ち上げ後の実通検査にパスすれば合格），SEEDS-IIをトロント大へ輸出後も，EMを用いた消費電力解析，運用ソフトウェアの開発など運用に向けた準備を続け，打ち上げに備えました．なお，地上局および衛星局のコールサイン等は以下の通りです．

トロントへの輸出から約9か月後の2008年3月に，SEEDS-IIはインドに輸出されました．そして，サティシュ・ダワン・スペースセンターでの直前チェック（フライト・オペレーション）を経て，PSLVロケットに搭載され，2008年4月28日に打ち上げられました．打ち上げは無事に成功し，現在も衛星工房メンバーが運用を続けています．

下の図は地上局のソフト（トラッキング，ダウンリンク，アップリンク，データベース等のソフト）と，実際にSSTVによりダウンリンクした画像の例（この画像はドイツのDK3WN Mikeさんが受信してくださったものです），ダウンリンクして衛星の状態を解析した例を示しています．

現在もSEEDS-IIはアウトリーチ活動で活躍中です．是非，SEEDS-IIから送信される音声やSSTV画像を受信してみてください．