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トピックス

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2010/02/22

最先端シュミレーションによる「次期固体ロケット」への空力設計支援

最先端のCFD技術を駆使した研究開発

JAXAでは、ロケットなどの宇宙機の空力設計において実験時間を短くしたり、ある種の実験そのものをなくしたりするために、スーパーコンピュータ上で空気の流れを模擬するCFD (数値流体力学) という手法を利用しています。しかし従来の方法では、この空力・流体解析に時間がかかり、宇宙機設計で使う上でボトルネックとなっていました。そこで情報・計算工学センター(JEDIセンター)では、宇宙機設計にかかる時間を劇的に短縮するために、CFDの新しい技術として、流体解析ソルバー"LS- Flow"と計算格子自動生成ツール"LS-Grid"の研究・開発を進めています。そして現在、これらの技術を次期固体ロケット(愛称:イプシロンロケット)等の様々な空力設計支援に活用しています。

次期固体ロケットの空力解析例

CFDで得られた結果を風洞試験結果と比較し、両者が一致する事を確認しました。CFDの結果が検証できたため、今度は実験で得られないデータ(横力分布等)をCFDの結果から取得しました。我々の最先端のCFDは、こうしたデータを提供することで次期固体ロケットのプロジェクトへ貢献しています。

現在実装している機能・特徴

流体解析ソルバー"LS-Flow" 【 任意多面体対応・非構造格子圧縮性流体解析ソルバー 】

  • SLAUスキームと前処理:一般の圧縮性ソルバが適用できないようなマッハ数の非常に低い流れにも対応
  • GLSQ(改良版最小二乗法):勾配計算の精度向上
  • DES, DDES実装による非定常乱流計算の精度向上
  • 移動格子を用い物体の非定常運動と流れの連成解析
  • JAXAスパコンJSSで大規模並列計算可能
  • アイオワ州立大(Wang教授)と共同研究

SLAUと前処理による翼周りマッハ0.01流れの数値計算とDDESによる非定常乱流計算

格子生成ツール"LS-Grid" 【 物体適合直交格子自動生成ツール 】

  • 微細な物体形状の特徴を保持する機能により,複雑形状を忠実に再現(特徴線保持機能)
  • 従来方法(マルチブロック構造格子)に比べ約20倍の効率向上
  • アイオワ州立大(Wang教授)と共同研究

特徴線保持機能を利用して作成したロケット周りの計算格子

"LS-Flow"と"LS-Grid"を組み合わせて検証中

次期固体ロケット空力解析の類似形式を用いた検証

略語

AUSM: Advection Upstream Splitting Method
CFD: Computational Fluid Dynamics (数値流体力学)
DDES: Delayed DES
DES: Detached-Eddy Simulation
GLSQ: Green-Gauss based WLSQ
JSS: JAXA Supercomputer System (JAXAスーパーコンピュータシステム)
SLAU: Simple Low-dissipation AUSM
WLSQ: Weighted Least Squares

Copyright 2010 Japan Aerospace Exploration Agency