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数値シミュレーション技術

数値シミュレーション技術

数値シミュレーション技術は、従来手法である理論(経験則含む)、実験に次ぐ第3の手法として、 すでに研究・設計・開発の標準手段となっており必要不可欠な技術です。一方で、宇宙開発の分野ではロケットや宇宙機に係る高圧、極低温、微小重力、高真空などの極限環境下の物理現象を伴うために、数値シミュレーション技術は世界的にまだ発展途上の段階にあります。
第三研究ユニットでは、ロケット及び宇宙機の技術課題解決や設計開発の革新に資するため、当該分野における世界トップレベルの数値シミュレーション技術の獲得を目指し、その研究開発を国内外の関係機関と連携して実施しています。また獲得した技術を活用し、JAXA内のプロジェクトや他部門業務における技術課題解決を支援しています。

シミュレーション技術全体図 内部流・燃焼・回転機械へのリンク 音響評価へのリンク 宇宙ガスダイナミクスへのリンク 推進薬熱流体挙動へのリンク 連携講座へのリンク シミュレーション安全性評価
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ロケット・宇宙機の数値シミュレーション技術の研究開発

シミュレーション技術全体図

1.内部流・燃焼・回転機械解析技術

ロケットエンジンや宇宙機スラスタの設計開発において性能未到達や不具合等のリスク低減を実現するために、基本要素となる内部流、燃焼、回転機械に係る解析技術の研究開発を進めています。現在は、特に最重要コンポーネントである燃焼器を対象に、推力性能、冷却性能、寿命や最大リスクである燃焼振動を定量的に予測可能な解析技術の研究開発を進めています。
これまでにサブスケール燃焼器で発生した燃焼振動の物理現象の再現や、フルスケール燃焼器における冷却特性の定量予測やクリープ疲労損傷現象のメカニズム解明などを達成しました。
また本技術は、2014年から設計開発が開始された新型基幹ロケットの1段および2段エンジンの設計評価で活用されています。


2.音響解析技術

イプシロンロケットのリフトオフ時音響解析結果
(流体場:マッハ数,音響場:静圧) イプシロンロケットのリフトオフ時音響解析結果
(流体場:マッハ数,音響場:静圧)

ロケットのリフトオフ時、及び遷音速飛行時に発生する音響振動を解析・予測する技術の研究開発を行っています。
音響発生機構となる流体現象をCFDで、フェアリング構造を透過して搭載する衛星に伝播するまでを構造音響FEMにて解析します。
過去、音響発生機構を解析するCFD技術をイプシロンロケット射点設計に適用し、衛星搭載部の外部音響レベルでM−Vロケットの1/10となり、世界の中小型ロケットの中では屈指の低騒音レベルを達成し、射点整備コストも従来手法の1/10で実現しました。現在は、新型基幹ロケットの射点設計への適用 を行っています。


3.宇宙ガスダイナミクス解析技術

H-IIBロケット上段再突入評価 天文衛星SPICAプルームコンタミ評価 HTVメインエンジンプルーム影響評価
上段(左)H-IIBロケット上段再突入評価(右)天文衛星SPICAプルームコンタミ評価
(下段)HTVメインエンジンプルーム影響評価

宇宙輸送、有人宇宙、科学衛星、惑星探査等の多様な宇宙開発ミッションに関連して、宇宙空間特有の希薄流体に係るリスク評価を実現する解析技術を研究開発しています。具体的には、大気圏再突入における空力・熱環境予測、宇宙空間での排気ガスプルームによる熱・圧力負荷予測、構造材からのアウトガス分布予測が可能な解析技術を開発しています。
本解析技術は、「こうのとり」のメインエンジンスラスタから排気されるガスプルームが国際宇宙ステーションに与える熱・圧力負荷評価に活用されています。


4.推進薬熱流体挙動解析技術

H-IIAupgarade_tank

ロケットや宇宙機の推進系設計開発において性能未到達や不具合等のリスク低減を実現するために、推進薬タンクやエンジン配管内の熱流体挙動を定量的に予測可能な解析技術の研究開発を進めています。
具体的には、「ターボポンプの予冷過程」や「ロケット飛行中のタンク内推進薬蒸発」の事前予測を実現とすることでロケットの無効推進薬量の定量的評価を可能にするなど、基幹ロケット推進系の設計開発に活用されています。


5.シミュレーションによる安全性評価技術

ロケットや宇宙機に対する安全要求の厳格化や、性能や運用性等の国際競争力の強化を目的に高忠実なシミュレーションを用いた定量的な安全性評価技術(QSA)を開発しています。
具体的には、様々なハザード事象を扱えるシミュレーション技術と効率的な確率論的評価技術を開発しています。
また、これらをHTVやH−IIA/B上段の再突入時のデブリ落下分散域の評価や、ロケットの飛行安全評価、小型回収カプセルのパラシュート放出系の設計に活用しています。


6.ロケット・宇宙機物理数学モデルの構築

ロケットや宇宙機に係る数値シミュレーション技術(上記の1〜5)を確立するために必要不可欠でありながら世界的にも未成熟となっているロケットや宇宙機特有の物理・数学モデルについて、東京大学に社会連携講座を設置し、産学官が連携したALLJAPANの研究体制のもと研究開発を進めています。
現在は、今後の将来宇宙開発ミッションを見据え、ミッション実現のためには数値シミュレーションを活用したブレークスルーが期待されている下記4分野の物理・数学モデルの構築を進めています。
 〕人安全性の定量的評価技術
 反応性熱流動現象
 推進薬熱流動現象
 だ椰─λ犹じ従
これらの研究開発により、我が国のロケット・宇宙機に係る数値シミュレーション技術の基盤技術力を強化するとともに、世界トップレベルの技術に進化させることを目指しています。
これまでに、従来は不可能であった数百化学種以上を考慮した詳細化学反応機構の大規模燃焼計算手法を開発し、従来手法では数百日を要した燃焼解析が数時間で可能となりました。これにより、未解明であった宇宙機スラスタ内での推進薬の自己着火現象を解明しました。また、当該技術を自動車分野へ応用し、未解明であった自動車エンジンのノッキング現象の解明にもつなげ、現在は自動車メーカのエンジン設計に利用が開始されました。


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