施設保全の性能規定化の取り組み
保全作業における課題
近年、保全業務においては、作業員高齢化、属人化、技術革新やデジタル化対応など、業界社会構造の変化が見られています。施設保全の適切な実施と宇宙航空業界の振興・競争力強化の観点に立ち、基盤インフラ保全に関する持続可能、かつ主体的・挑戦的な取り組み=JAXAが考えるスマート保全※1を目指して業務にあたっているところです。
※1 宇宙航空に関する地上施設のスマート保全実現に向けて(JAXA 施設部)
マネジメントサイクルの変換
現在の保全業務マネジメントは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(点検)、Action(改善)のサイクルで保全業務を遂行しています。こちらは施設毎の状態を細かく把握出来ていなくても実施可能な、ある一定の制約前提条件のもとでパフォーマンス向上を見込むものです。今後全国各拠点の基盤インフラ施設へ各種センサーを整備することにより、より詳細に基盤インフラ施設状態がタイムリーに把握できる状態を目指しています。
しかし、各拠点における基盤インフラ施設状態や取り巻く環境、点検頻度を含む施設保全状況や使用状況等、前提となる設備の監視レベルも異なり、一つとして同じ状態であることはありません。例えば、臼田宇宙空間観測所や大樹航空宇宙実験場は寒冷地、沿岸部の種子島宇宙センター・内之浦宇宙空間観測所・能代ロケット実験場は塩害地域に所在しています。また、調布航空宇宙センターは風洞試験等により一時的に大電力が必要になることがあり、筑波宇宙センターでは衛星の追跡運用等、1日中継続して高負荷で電力が使用されるなど、各事業所により特徴があります。
このような場合は、災害や事故発生時等に行う臨機応変な計画見直し手法が相応しく、従来のPDCAからObserve(観察)、Orient(判断)、Decide(意思決定)、Act(行動)プロセスに、タイムリーに変更していく必要があると考えています。具体的には各拠点の施設状態に応じて、劣化要因分析・診断を行ったのち、点検内容やセンサーの追加・再配置等の見直しを行います。また、拠点毎に施設の保有すべき機能水準について事業影響度を考慮しランク分けします。
次年度の各拠点保全業務において、一部性能規定化(10%~40%)の実現見込みが立ったため、施設状態に応じた点検頻度を変更する取り組みを開始する予定です。なお、遠隔監視等による点検頻度の変更を含むスマート保全化により、安心安全運用を実現し、作業員高齢化や属人化の解消に対応します。

今後の展望
今年度(2024年度)の性能規定化の作業実績と効果を検証し、さらなる最適化、安定的運用を含めた持続可能な保全業務実現に向け、取り組んでまいります。