射場の電力基盤におけるD&3E確立 ― 種子島宇宙センター 大容量電力貯蔵システム ―

公開日:2021/01/27 最終更新日:2021/02/04

大容量電力貯蔵システム導入の背景

種子島宇宙センターにおいては、打上げ整備作業に必要な電力を自ら保有する複数の自家用発電機により、24時間365日発電し、センター内施設に送配電しています。また、落雷や台風等の自然災害が多く発生することから、事業継続のため、複数機を用いた冗長運転を行い電力の安定供給に努めています。

今回、電力システムの更なる信頼性向上、将来のスマート射場化を見据え、先ず発電機故障停止時のバックアップ運転、更に既存発電機運転の高効率化、信頼性向上を目的として大容量電力貯蔵システムを導入することとなりました。各協力会社との連携により仕様と運用方法の最適化を図り2021年4月より本格運用を開始する予定です。

イメージ図

信頼性と経済性の両立

今回の大容量電力貯蔵システムの構築には、 (株)九電工、富士電機(株)、日本ガイシ(株)の技術支援を受け、射場の電力基盤に相応しい信頼性と安定性を有し、かつ、経済性も確保したシステムを実現します。

運用マネジメント支援

種子島、射場という特性を踏まえて各種蓄電池を比較しました。電力信頼性の向上のみならず、容量(放電時間)、耐環境性、ライフサイクルコストなどを踏まえて、高出力・大容量であるナトリウム・硫黄電池を選定しました。

なお、自家用発電機との連携運転の最適化を図るため、年間の発電機運転実績を用いた蓄電池の充放電シミュレーションを(株)九電工殿の支援を受けて実施しました。

その結果、当該電池の導入により、適切なタイミングで充放電を行うことで既設発電機の高効率化運転が可能となり、燃料使用量を約8%削減するとともに、年間運転時間を約35%削減できることを確認しています。

性能最大化のため確実な制御

蓄電池用PCS※1が有する機能を簡単に紹介します。なお、既設発電機と今回導入する蓄電池の連携制御は、富士電機(株)殿がこれまで離島マイクログリッド実証実験等で得られた最新の知見を取り入れています。

太陽光用PCSが一方向(発電した電力を電力系統に送り込むだけ)の変換機能に対して、蓄電池用PCSは、双方向(充電と放電)の変換が必要となる点が大きな特徴です。

また、蓄電池用PCSには蓄電池側の運転制約条件や充電率等を考慮した、適切な出力制限を常時行う事が求められます。

種子島宇宙センターは電力会社の大きな電力系統に比べ、比較的小規模で独立している系統であり、従来は構内負荷変動に対して発電機の出力調整機能で対応していました。

出力応答性に優れる蓄電池用PCSを導入する事で、発電機の出力調整速度を大幅に上回る負荷変動に対する補償動作が可能となり、構内電力品質の向上に繋がります。

ただし、構内負荷、発電機出力、蓄電池出力を瞬間的に把握しないと小規模系統ゆえに系統全体のバランスが崩れやすいので、それを防ぐ為に計測制御を通常よりも高速に行っている点がポイントです。

なお、今回整備した蓄電池用PCSは構内の運用面、発電機及び系統との連携を考慮し、電圧適用範囲を含め、様々な機能に対応するため制御上の制約が多いことから特別仕様となっています。

※1 PCS … Power Conditioning Subsystem の略。パワーコンディショナーとも呼ばれ、出力電力の制御や系統の保護を行う。
参照:蓄電池型パワーコンディショナ(富士電機株式会社)

  1. 発電機バックアップ運転
    複数の稼働中発電機が故障停止した際に、放電電源として負荷への電源バックアップ給電(運転)を行います。
    発電機故障時のバックアップ出力イメージ
  2. 周波数安定化(供給電力品質向上)
    当システムの高速な出力応答性を用いて、発電機が追従できない負荷変動を蓄電池の充放電で吸収し、発電機の回転を安定させて、周波数変動を抑えます。
  3. 発電機の高効率運転
    発電機は定格出力付近で最も燃焼効率が良いことから、発電機が低負荷の時に、蓄電池を充電して発電機の負荷率を上げることで、発電機を高効率運転とする制御を行います。
    ただし、蓄電池は充電可能な電力量に限りがあるため、充電と放電運転を組み合わせた運転制御を行います。

大容量蓄電池(ナトリウム・硫黄電池)

長時間稼働が可能であり発電機運転台数削減に寄与します。また、当該蓄電池はコンテナ型では最大出力・容量の規模であり、離島電力を支えるモデルケースとなることから、今後も本電池の状態を常時監視・評価検証していく予定です。

ナトリウム・硫黄電池の詳細は下記リンクをご覧ください。

将来の射場電力システム

エネルギーを安定供給し、そしてクリーンに。
「電力基盤におけるD&3Eの確立」

2030年までに基盤インフラにおける「D&3E」を実現します。
  • 監視機能をデジタル化 (Digitalization)・高度化
  • その指令による安定した電力供給 (Energy Security)システムの構築
  • 高効率、コンパクト化、ダウンサイジングを図り経済効率性 (Economic Efficiency)を確保
  • 脱炭素化・CO2削減といった環境性 (Environment)を積極的に推進できるシステムの技術開発・実装

具体策

  • 設備保全のための計画停電を容易に。不具合の早期発見と確実な処置
  • 種子島宇宙センター全体の停電(ブラックアウト)に対応可能な強固な電力系統の構築
  • 化石燃料(A重油)に依存した発電システムからの脱却
  • 高効率運転に伴う燃料費及びCO2排出量の大幅削減
  • デジタル、IoT化による監視機能の強化と最適な予防・予兆保全の実現

射場でのエネルギー自給自足へ

射場にはロケットの燃料である液化水素(LH2)が貯蔵されています。現在は、コンテナで陸路・海路を経由し輸送されていますが、今後は天然ガスなどを用いて発電機燃料を多様化させると共に、その天然ガスから水素を取り出し、先ずは施設保全のための移動手段としての燃料電池車(FCV)で使用する予定です。また種子島の農作物を利用したメタン(CH4)発酵・改質技術※2の可能性についても検討中であり、炭素を循環させた島独自の発電システムの在り方を模索しています。

今回の蓄電池の導入は「射場のエネルギーの自給自足」を目指す取り組みにおける施策の最初の第1歩となります。近い将来、水素・炭素等のクリーンエネルギーの循環システムが構築されれば、平時から再生エネルギー電源を有効活用でき、災害時には周辺系統によらない自立的な電力供給が可能となります。我々JAXA施設部は、射場のみならず、離島全体のエネルギーシステムの1つのモデルケース確立を目指します。

エネルギー自給自足 イメージ図

※2 参照:メタンガス化が何かを知るための情報サイト(環境省)
メタンガス化に関する基本的事項(環境省)

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