建設工事におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)への取組み

公開日:2021/05/11 最終更新日:2021/05/18

施工DXの取り組み

施工の自動化実証

無人走行実証中の振動ローラ

施工の自動化の実証エリア

施工実証エリアの遠景

工事現場で活躍する建設重機の運転には高い技術が必要です。しかし、熟練技術者の高齢化等により、建設重機を運転できる技術者が少なくなっています。これを解決する取り組みのひとつとして、施工の自動化・遠隔化があります。

施工の自動化とは、数多くの熟練技術者の操作データに基づき自動で重機を制御する技術であり、遠隔化とは、遠く離れた場所から遠隔操作で建設重機を動かし作業する技術です。施工の自動化・遠隔化技術が確立されれば、一人で複数の建設重機を管理することができ、へき地にある現場に熟練技術者を配置しなくても、施工することが可能となります。

そこで、JAXA施設部では、離島に位置する種子島宇宙センターの敷地造成工事において、自動化施工実証に取り組みました。対象としたのは、敷地造成の一部エリアの敷均し工事です。人工衛星から受信した位置情報を基に振動ローラと呼ばれる建設重機を走行させ、施工する内容です。無人施工は有人施工時と比べて、走行軌跡が制御されており、ロスの少ない軌跡を描いています。また、品質を管理する土の締固め度においても、同程度の結果が得られており、作業時間も同等であることから自動施工が建設業界共通の課題である熟練技術者不足に対して解決策の一つになりうることを確認しました。

建設重機の走行軌跡_有人施工時
建設重機の走行軌跡_無人施工時

施工時の動画

施工自動化実証の敷き均し工事の様子を5倍速にしたものです。

UAVとCIMを組み合わせた進捗管理

標高データとオルソ画像の組み合わせによる3Dモデル

地形の断面情報(施工前地形、現況地形、完成予定地形)

3D-CIMに関するデータと敷地造成範囲

撮影や計測に用いたUAV(ドローン)

UAV(ドローン)で取得したデータを処理する装置

UAV(ドローン)と操縦に必要な送信機(プロポ)

今回の工事は、道路や敷地を整備する大規模な土工事であり、土や資材を運搬する際に、車両の動線が干渉しないよう、効率的な作業を行うことが重要です。刻一刻と変わる現場の状況を出来る限りタイムリーに把握するため、UAV(ドローン)を用い定期的に現況測量※1を行っています。

山間部で行う土木工事では、作業場所に建設重機をアクセスさせる通路や作業ヤード確保を意識した複雑な作業工程を計画する必要があります。同時に、自然を相手にする現場作業では臨機応変な対応が求められる場面もあり、立体体な視点で全体を俯瞰的に把握することができるドローン測量は検討に役立ちます。また、2次元図面の情報だけでなく、3D-CIM※2を活用することで、工事内容を視覚的、直感的に分かり易い情報に加工することで、施工ステップの事前検討、課題抽出など、作業手順のシミュレーションが可能となります。

また、工事関係者間のコミュニケーションツールとしても有効であり、より円滑な施工が実現できます。

さらに、供用開始後は、施工中の情報を蓄積した3D-CIMモデルを用いて、保全・修繕計画の立案から次の調査・設計・施工にも活用するなど、社会インフラに係る一連のサイクルを効率的にまわしていきます

※1 離着陸・飛行、取得した点群データの解析、オルソ画像(撮影した写真を並べたもの)の作成を自動で行う技術・サービスを利用し、飛行測量からデータ解析まで約半日で実施

※2 3D-CIM … 土木工事において3次元データと各種情報を連携させて活用する技術。国土交通省が推進するアイ・コンストラクションの一環として導入されている。

ドローンで撮影した工事進捗 2020/11/10
ドローンで撮影した工事進捗 2021/02/24

安全と施工DX

建設工事の現場は、常に事故やトラブルといった危険と隣り合わせとなる場所です。安全対策のため、最大限の準備を行い、注意深く作業を行います。万が一にも事故に見舞われないよう、人命を第一に考えているからです。

現在の施工現場では、建設重機1台につき、1名のオペレータ(操縦者)が必要です。さらに複数台の建設重機を動かす場合は、作業全体を監視する人を配置しています。しかし、施工の自動化が進めば、1名で複数の建設重機を遠隔で管理し、施工できるようになります。複数の建設重機が動く現場に人が居なくなるため、建設重機に巻き込まれるような事故が減少します。

UAVや3D-CIMモデルを用いることは、現場の状況やこれから行う作業をわかりやすく共有することができるため、事故を未然に防ぐことにつながります。共通の認識のもと行う作業は、連携が強固になり、トラブルを事前に回避することができます。

他にも、ウェアラブルカメラやオンライン会議の活用による遠隔地にいる技術者とのコミュニケーションや、書類の電子化や共有フォルダの積極的な利用による事務手続きの簡略化に努めており、作業を減らすことで、工事現場に向き合う時間を増やす活動を行っています

熟練技術者が減少する現代において、これら施工DXに取り組むことで、少しでもその技術とノウハウを活かし、教訓を蓄積しつつ、さらなる安全向上を努めるとともに、利用者が期待するサービスを提供することが、これからの時代益々必要になると考えています。

最後に

施工現場の監理だけではなく、現有施設を適切に維持・運用していくことも、重要な業務の一つです。効果的・効率的な業務遂行を目指して、電力量見える化やデマンド監視、図面電子化や施設情報のデータ構造化といった業務のデジタル化を推進してきました※3。今後は、これらに加えて、施設の不具合情報や現場写真情報を集約・連携を図り、総括的なマネジメントと社内利用者への双方向サービスを実現するIoTプラットフォームを整備する構想があります。

その上で、施設情報やその関連情報の収集・デジタル化を行い、それらを連携・分析することで課題を探求していきます。さらに、集約情報をベースに探求課題の解決方法を見出し、実業務に反映させ好循環を生み出します。

これらの取り組みを継続することで、利用者が自由に必要な情報にアクセスすることが可能となり、機構内外との情報共有、連携、共創と言ったこれまでにない新しい形(点から面)での施設管理が実現します。これこそがJAXA施設部が目指す社会基盤インフラにおけるDXです。

※3 このほか、漏水監視、法面傾斜モニタリング、水位計測、PLC(電源線を通信に利用する技術)による空調制御、絶縁監視といった業務のデジタル化も行っている

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