筑波宇宙センターにおけるESCO事業による人工衛星試験室等の空調熱源老朽化更新

公開日:2020/02/18 最終更新日:2020/02/18
 2017年度にJAXA・施工者・運用者の三者による、施工だけでなく運用についても互いに検証しながら省エネルギー・CO2削減効果を高めるための取り組み(以下、コミッショニング)を始めました。
その結果、筑波宇宙センターの人工衛星試験室等の空調用中央熱源機器(以下、対象機器)を更新することで、省エネルギーに大きく貢献できることが判明しました。
 2018年度にはESCO事業導入に関する検討を行い、対象機器の老朽化更新及び最適な運用による省エネルギーの実現を目的としたESCO事業の契約を締結しました。
 2019年度は、設備更新の設計・工事及び試運転調整(2020年2月現在実施中)を行い、2020年度から実運用に入る予定です。

ESCO事業:イメージ図

イメージ図(社会環境報告書2019より)

ESCO事業:冷却塔(更新前)

冷却塔(更新前)

ESCO事業:冷却塔(更新後)

冷却塔(更新後)

ESCO事業:冷却水ポンプ(更新前)

冷却水ポンプ(更新前)

ESCO事業:冷却水ポンプ(更新後)

冷却水ポンプ(更新後)

ESCO事業:ターボ冷凍機(更新前)

ターボ冷凍機(更新前)

ESCO事業:ターボ冷凍機(更新後)

ターボ冷凍機(更新後)

ESCO事業:冷水ポンプ(更新前)

冷水ポンプ(更新前)

ESCO事業:冷水ポンプ全景(更新後)

冷水ポンプ全景(更新後)

ESCO事業:冷水ポンプ本体(更新後)

冷水ポンプ本体(更新後)

ESCO事業とは

 ESCO(Energy Service Company)事業とは、省エネルギー改修工事において、エネルギー診断から設計・施工・設備保守・省エネルギー効果検証までをESCO事業者がワンストップで行う事業のことです。改修工事に関する費用を、改修により実現する光熱水費の削減分で賄うことができます。

空調用中央熱源機器が抱える問題点とESCO事業導入経緯・効果

空調用中央熱源機器の問題点

 前述の対象機器は設置から20年が経過し、長年の運用により以下の問題点が顕在化していました。
  1. 対象機器不具合発生時の事業影響リスクが大きい
    不具合発生時には、人工衛星試験室等への熱源供給が滞ることで整備環境が悪化し、衛星等の試験に遅延などの影響を及ぼしかねない。
  2. 対象機器がある建物はエネルギー消費量がJAXA内で最も多い建物である
    JAXA全体(約650棟)の4%を占めるエネルギー消費量であり、エネルギーの削減余地が高い。

コミッショニング

 2017年度から実施したコミッショニングでは、最適な熱流量制御になるよう、各冷水制御のチューニングを行いました。その結果、対象機器の容量に20%の削減余地があることが分かりました。

 その他、コミッショニング自体の具体的な省エネルギー効果は以下の通りです。
  • 2016年度と比べ2018年度は、電力量891,729 kWhの削減、原油換算で221kL/年の削減
    (筑波宇宙センター全体の電力消費量52,555,550 kWh(2016年度)の1.7%削減)
  • 継続的な省エネルギー推進の為、本コミッショニング手法を標準化・定常化する必要性の再認識
  • 本取り組みの省エネルギー結果に伴い、各職員の省エネルギーに対する意識が向上

ESCO事業導入による効果

 そこで、過去3年間のエネルギー使用量平均値を用いて、ESCO事業導入に関する検討を2018年度に行い、以下のような効果が得られることが確認されました。ESCO導入には大きな省エネルギーの余地が必要ですが、コミッショニングでの検証結果、そしてESCO事業導入検討結果により対象機器の建物におけるESCOの成立性が確認されました。
  1. 設備更新により、老朽化故障による衛星試験等への影響リスクが低減
  2. CO2排出量を削減(JAXA年間削減目標1%以上を達成)

     設備更新により、CO2排出量を1,100t/年程度削減することが可能となる試算です。JAXAでのCO2総排出量を1.4%削減することとなり、年間削減目標1%を達成します。
     また、電力は約2,367,000kwh/年(一般家庭789軒相当※1)、ガスは36,000m3/年(一般家庭100軒相当※1)の年間使用量を削減することが試算上可能となります(グラフ参照)。

    ※1 一般家庭の年間使用量を電力:3000kWh, 都市ガス:360㎥として計算

ESCO事業導入による設備の更新概略

 2019年度に実施した設備更新のポイントは以下の通りです。

運転機器の見直し

 ESCO事業導入に関する検討結果に基づき、ガス焚吸収式冷凍機は利用せず運用が可能であることが分かりました。そのため当該冷凍機はバックアップ用として、ターボ冷凍機2台(1000RTと500RT※2)を更新対象としました。

※2:RT…「冷凍トン」。冷凍機の能力を表す単位で、1RTとは24時間で0℃の水1トンを0℃の氷1トンにする冷凍能力を指す。

更新機器の容量の見直し

 冷凍機2台で計1500RT(1000RT・500RT)の容量を、計1200RT(600RT・600RT)に更新し、容量を縮小しました。
 また、冷水が不足するなどの万が一の不具合に備えて、更新時期を調整しました(10月~11月に500RTの冷凍機を、1台の冷凍機でも運用できる冬期間の12月~1月に1000RTの冷凍機を更新)。
 また、ポンプの揚程計算を行い、適切なランクの電動機を選定しました。

インバータの再利用と新設

 インバータで制御することにより、無駄な消費電力を削減します。
 また、冷却水ポンプの稼働時には水処理用の薬液を注入しますが、これに関してもインバータによって冷却水の濃度に応じて適切な量を注入することが可能となります。

試運転調整と2020年度からの実運用について

 2020年2月現在、試運転調整を行っています。最適な運用となるよう、継続的なチューニングとコミッショニングを行い、省エネルギーのみならず、エネルギー安定供給と事業推進への貢献に努めてまいります。

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