地上施設のSmart & BCP ― ディマンドレスポンスによる抑制電力の活用と社会貢献 ―

公開日:2020/10/01 最終更新日:2020/10/01

背景

近年、日本では、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、電力品質の確保が課題となっています。東日本大震災においてエネルギー供給の制約や集中型エネルギーシステムの脆弱性が顕在化したことは、今でも記憶に新しいところです。

現在、種子島においては基幹ロケットの確実な打上げに資するため電力システム全体の信頼性向上を目的とした大型蓄電池の整備をはじめ、分散型エネルギーシステムの構築に向けた取組みを進めているところです(本取組みについては別途紹介予定)。

また、筑波・調布においては大型試験設備を有しており※1、一時的に電力需要にディマンド(ピーク)が発生することがあります。ディマンド抑制(ピークカット)をするために、常用発電機を整備し常時待機しています。

一方、試験計画は事前に調整できることが多いことから、試験計画日時を調整して電力需要のピークを平準化する運用に取り組みつつ、常用発電設備を用いて電気の需要量を無駄なく制御する「ディマンドレスポンス(Demand Response, 以下DR)」を活用し、抑制電力を調整力として市場に提供することを考えました。

※1 特に電力使用量が多い試験として、13mφスペースチャンバを用いる真空/熱環境試験(筑波)、遷音速風洞における風洞試験(調布)が挙げられる。

ネガワット取引きとは

電力需給がひっ迫した際、電力会社からの要請に対してアグリケーターが仲介・司令し、需要家(ここではJAXA)が電力需要の抑制(節電)を行うことで、インセンティブ(報酬)を得る仕組みのことです。インセンティブ型DRとも言います。※2

需要家が積極的にDRに参加し調整力を供することで、電力会社は従来ピーク需要のために用意しなければならなかった発電機などの整備や維持管理コストが削減可能となります。需要家は電力会社から得た報酬で発電機維持費を補填することも可能となります。

ネガワット取引
ネガワット取引

※2 参考:ネガワット取引(経済産業省 資源エネルギー庁)

BCP対応と社会課題解決の両立

筑波宇宙センター発電機
筑波宇宙センター発電機
調布航空宇宙センター発電機
調布航空宇宙センター発電機

電力会社から電力需要抑制の要請を受けるのは、電力が逼迫する当日の3時間前ですが、反応するまでに幾分かの猶予があると言えます。しかし、事業に影響を及ぼさない範囲で電力を抑制することは、高度な運用が求められます。施設部では電力使用量の見える化を図っており、事業所内の電力をJAXA内の他部門と共有し、高度な運用の結果として抑制した電力を地域に回すことで、電力需要の安定化、更には社会貢献にも繋げています。

Smart BCP
Smart BCP
平時の確実な事業推進の下支え(Smart)と非常時の事業継続(BCP)の両立

また、災害発生時の対応マニュアルは整備されていますが、未知の災害に対応するためには、これまでの災害による被害や反省点を踏まえつつ、常に様々な事態を想定しながらオペレーションを改善することが重要です。そのため、DRによる発電機起動は、平時からBCP対応(地震等の自然災害発生時の有事対応)の訓練としても有効であると考えています。

スマートでレジリエンスな施設づくりはこれからのスタンダードです。この取り組みを筑波研究学園都市内の各研究機関などに展開し、電気を通じてお互いを支えあう、新しいネットワークづくりを目指します。

関連リンク