「基礎」無くして観測ならず! ~地球観測衛星の地上局整備における施設部の役割~

公開日:2020/06/15 最終更新日:2020/06/16

JAXA追跡ネットワーク技術センター(以下、担当部門)では、今後打ち上げられる地球観測衛星の先進光学衛星(ALOS-3)や、先進レーダ衛星(ALOS-4)の観測データ受信のため、筑波宇宙センターと地球観測センターに地上局整備を進めています(※2020年6月現在)。

施設部は担当部門の要請を受けて、地上局整備のうち以下の業務を担いました。

アンテナ・シェルタの基礎・外構の整備

要求の耐震・耐風条件を満たしたアンテナの基礎を整備

口径5m・重量約30tのアンテナ及びデータ送受信装置等を格納するシェルタコンテナ2基をしっかり支えるため、剛性の大きい鉄筋コンクリート基礎等を整備しました。

アンテナ概要図

旧アンテナの既存基礎を有効活用し、経済設計を実現

地球観測センターでは、旧アンテナ撤去時の写真・図面・構造計算書を基に、既存基礎を有効活用することは可能か検討しました。

既存基礎を有効活用するには、アンテナの重量が大きく影響します。旧アンテナはペデスタル含めて約140t,新アンテナは約30tです。このため十分な安全性を確保できることが分かり、既存基礎を活用した経済設計の実現に至りました※1

※1 経済設計:既存の基礎を撤去した場合、撤去費用がかかる上に工期も伸びてしまいます。しかし今回の場合においては、安全性を確保したうえで、工期短縮・コスト削減が実現できたということが「経済設計」であると言えます。

黄色に着色されている部分が既存基礎

写真中央が既存基礎

要求のアンカーボルトの据付精度を確保し、基礎とアンテナの確実なインターフェース接続を実現

各アンカーボルト間の公差について、図面寸法の±2㎜以内という厳しい精度要求がありました。

美笹深宇宙探査用地上局の口径54mアンテナ基礎工事では、アンカーボルトの総計が約1000本の支持フレーム検討から工事監理まで対応しました。この経験を活かし、新たな支持フレームの精度管理手法を確立しました。具体的には、コンクリートの打設時(流し込み)の衝撃でアンカーボルトがずれないように、堅固であるが容易に調整できる機構を新たに開発しました。

また、フレームは所定の精度を確保するため、工場で組み立てた上で現場へ搬入・設置しました。これにより、現場での作業が軽減され、工期の短縮にも繋がりました。

以上の対応を行い、あとはアンテナ柱脚部が、施設部が設置したアンカーボルトに無事据え付けられるのを待つのみとなりました。

アンカーボルト割付図(計24本)

アンカーボルト割付図(計24本)

アンカーボルト据付状況

アンカーボルト据付状況

フレーム組立ての様子

工場検査の様子

コンクリート打設前のアンカーボルト検査

アンテナ柱脚据え付けの様子(地球観測センター)

アンテナ柱脚

アンテナ基礎

アンテナ柱脚移動

アンテナ柱脚据え付け時の様子です。柱脚を搬入し、いよいよ据え付けとなります。その様子は動画でご覧ください。

アンテナ柱脚据え付け後
アンテナ柱脚据え付け後
アンテナ設置状況
アンテナ設置状況

アンテナ用電源設備などの整備

アンテナ駆動に必要な電力を安定して供給するための設備を整備しました。停電時の対応や、日常の監視体制も整えています。また、アンテナを雷から守る避雷針も整備しました。

アンテナ用電源設備全体イメージ図

無停電電源装置シェルタ 外観

無停電電源装置

避雷針

電力監視用機器

電力監視用機器:シェルタ上部に見える小さいアンテナから、警報を送信している

地上局全景(筑波宇宙センター)

おわりに

アンテナを始めとして全ての地上局設備は地盤を含む「基礎」によって支持されています。適切な基礎を造らないと、安全性・耐久性はもちろん、観測の精度も確保できません。

見えないところにこそ、強いこだわりを持って造る。これが施設部の職人魂です。

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