小型ソーラー電力セイル実証機IKAROSの研究開発
小型ソーラー電力セイル実証機IKAROSは,ソーラーセイル展開構造・機構,薄膜太陽電池,ソーラーセイル航行技術などの宇宙実証のため,2007年度後半にスタートした.2010年5月の金星探査機「あかつき」の打ち上げに相乗りする機会を利用するため,開発期間は2年半と決まっていた.その間に,1辺14mのソーラー電力セイル膜面の展開構造・機構と衛星バスシステムの開発を行うことになった.その中で,ソーラーセイル展開構造・機構とバス構造の研究開発のとりまとめとして参加することができた.ソーラー電力セイル展開構造・機構の研究開発では,ソーラーセイル膜面の設計,展開機構の設計・開発・試験,ソーラーセイル展開挙動の数値シミュレーションや実験などを,JSPEC(月・惑星探査グループ)の関係者と大学の膜面構造や衛星システムの研究者,ISASと大学の大学院生らと協力して推進した.バス構造の開発では,金星探査機「あかつき」と相乗りするため,「あかつき」の打ち上げに悪影響を与えないことに強く配慮しながら,衛星メーカーとともに設計から各種機械環境試験を実施した.IKAROSは,打ち上げ,ソーラー電力セイルの展開,薄膜太陽電池による発電,航行技術などの宇宙実証に次々に成功し,2010年12月上旬に金星を通過した後,さらに航行を続けている.
IKAROSの軌道上実験によって,膜面展開構造に関する様々な貴重なデータが得られており,特に,セイルが予想以上に変形しにくいことがわかり,非線形有限要素法による展開形状解析を行ってその原因を検討している.,
IKAROSの詳細は,IKAROS専門チャンネルを参照.