世界最高性能の試験設備を使い新時代を切り拓く技術を生み出す
八柳 秀門
2023年入構
情報科学研究科 情報基礎科学専攻修了
研究開発部門 第四研究ユニット
REASON入構の理由
偶然掴んだJAXAとの共同研究の機会
子どもの頃から星を見るのが好きでした。幼少期を過ごしたのは、超が付くほどの田舎町。夜になると真っ暗で、星がとても綺麗に見えました。よく家の前の砂利に寝転がって、星空を眺めていたものです。この頃から漠然と宇宙に興味があったのだと思います。中学生のときにJAXA職員のオンライン講演を聞く機会があり、そこで初めてJAXAのことを知りました。その頃から「自分もいつかJAXAで働いてみたい!」と思うようになりました。
宇宙に関わる研究がやりたくて、大学では工学部に進学しました。しかし、航空宇宙系の研究室は人気が高く、あまり成績が良くなかった私は情報科学系の研究室に配属されました。このとき、一度は宇宙への道を諦めました。ところが幸運にも、私が配属された年に研究室とJAXAの共同研究が始まり、私もその研究に参加することに。博士課程の5年間、職員の皆さんと共に実験や研究を進める中で、JAXAで働きたいという思いは強くなり、就職活動では迷わずJAXAに応募しました。
WORKわたしの仕事
世界最高性能の試験設備が見せてくれる世界初の実験データ
ロケットやスクラムジェットエンジン、大気圏再突入機など、いわゆる「宇宙輸送系」の研究開発が行われている角田宇宙センターには、様々な試験設備が揃っています。私は「高温衝撃風洞(HIEST)」という大気圏再突入環境を模擬できる設備で働きながら、大学での専門である数値計算を活かして、宇宙往還機や回収カプセルが再突入時に受ける「熱」を予測する研究を行っています。学生時代とは研究テーマが異なるので、配属が決まったときは少し戸惑いましたが、今ではむしろHIESTの研究に携われてよかったと思っています。
大気圏再突入の研究は半世紀以上も前から行われていますが、機体が受ける熱や機体表面の正確な温度は未だによくわかっていません。アポロ宇宙船やスペースシャトルを開発したNASAでさえ、正確な温度を予測できていないのです。現状の技術レベルでは、再突入時の熱から機体を保護するヒートシールドを必要以上に厚くせざるを得ず、その重さは機体全体の数十%にも及びます。再突入時の熱を正確に予測できれば、余分なヒートシールドを削減し、より多くのペイロード(荷物)を積むことができます。HIESTでの研究を通じて、宇宙往還機や大気圏再突入カプセルの技術革新に貢献することが私たちのミッションです。
HISETは、世界最高性能を誇る高温衝撃風洞です。ここでしかできない実験も数多くあり、得られるデータには世界中の注目が集まります。実験データを世界で最初に見る瞬間は胸が高鳴りますし、データの解析も非常に面白く、やりがいを感じています。
FUTURE将来の想い
何ごとも前向きにとらえて チャンスに変えていく
今後数十年で、地球低軌道や月面への宇宙輸送需要は爆発的に増加すると予想されます。日本でも毎日のようにロケットが打ち上がる日が来るでしょう。そんな「大量宇宙輸送時代」を支える基盤技術の研究開発に貢献したいです。その先に、日本独自の有人宇宙船や大型の宇宙探査ミッションが実現できれば、これほど嬉しいことはありません。
JAXA職員に求められる役割は急速に拡大しています。大変なこともありますが、その分チャンスも多い組織だと思います。多少思い通りにならなくても腐らず、この環境を生かして成長していこうという前向きな気持ちがあれば、JAXAでの仕事を楽しめると思いますし、自分自身もそうありたいと思っています。
CAREER PATHキャリアパス
入構してからこれまでのキャリア
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1st year
研究開発部門 第四研究ユニットに配属(現職)
角田宇宙センターの高温衝撃風洞(HIEST)の運用を担当する傍ら、機体が大気圏再突入時に受ける熱を予測する研究を行う。
THE OTHER SIDE OF THE MOON私の一面
お酒が大好きで、家には日本酒用の冷蔵庫があります。どのお酒も一本一本、それぞれに個性があり、飲んでいて飽きることがありません。休日の酒屋巡りは、宝探しのような感覚で楽しんでいます。