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フライトディレクタ地上から有人宇宙ミッションの舵を取る
関川 知里
2011年入社
理学研究科 地球惑星科学専攻修了
有人宇宙技術部門 有人宇宙技術センター
REASON入社の理由

どこを切っても宇宙の仕事
小さい頃から宇宙のことが好きで、宇宙関係の仕事に憧れました。大学院では隕石の組成分析等を行い太陽系の成り立ちについて研究していました。研究者になる道も考えましたが、研究者でなくともJAXAに入れることを就活サイトで知り、応募しました。他の企業でも宇宙関係の仕事に携われる可能性はありますが、JAXAなら「どこを切っても宇宙の仕事」だと思いました。
WORKわたしの仕事

ボート部でクルーを束ねた経験を活かす フライトディレクタへの挑戦
入社年次が浅い頃は、「特定の技術領域で尖った専門家にならなければ」、という考えに必要以上に縛られていたこともありました。今でもそういう人材に対する憧れはありますが、経験を重ねていくうちに、そうでなくとも、誰かに感謝されたり、貢献できたりと、自分だからこそできる働き方があると思えるようになりました。
そのきっかけは、入社6年目に、国際宇宙ステーション(ISS)の管制官として、宇宙飛行士と日本実験棟「きぼう」の安全を見守る役割である、「フライトディレクタ」の社内公募に応募したことです。大学時代は体育会系のボート部で「コックス」という舵を取るポジションを担っていました。そこでボートのクルーを束ね尽力した経験がこの仕事でも活かせると考えたのです。これまで経験のない「有人宇宙」の分野でしたが、挑戦したところ、採用されることになりました。
フライトディレクタは、管制室では「きぼう」を監視し、トラブルが起きた時に対応する他、宇宙飛行士の仕事をモニタリングして、指示を出します。また機器故障等、想定外の場面では、NASAとリアルタイムで調整することもあります。月の1/2~1/3は24時間体制の管制室でのシフト勤務、それ以外の時は執務室で宇宙飛行士の作業等に関連する事前準備や、その他周辺業務に携わっています。
2019年の夏には、はじめて「インクリメント・リード」としてチームをまとめました。インクリメント・リードとは、このフライトディレクタたちを含む、管制官全体のリーダー役のことです。各ポジションの管制官たち(約100名)をまとめながら、日々変わる状況に合わせて先の計画を組み立てたり、チームでトラブルに対処したりしました。数か月間続いたインクリメント・リード期間が終わった時には、数々の困難をチーム全員で乗り越えることができたという達成感と、チームをうまくまとめて困難や課題を乗り越えられたことに大きなやりがいを感じました。
当時は油井宇宙飛行士がヒューストンでNASAチームの一員として働いていて、時には連携して業務に当たることもありました。NASA側のフライトディレクタとも密な連携が必要で、英語で沢山打合せややり取りをしたことで、信頼関係を築くこともできました。また2021年の夏には、3度目のインクリメント・リードとして、星出ミッションを担当しました。ISSにいる星出宇宙飛行士とも頻繁に連絡を取り合い、ミッション期間終了時には「フライトディレクタをはじめとする地上のメンバが頑張ってくれたから、多くの実験を成功させることができた」と言ってくれたときはとてもうれしかったです。JAXAに入り、現在の仕事に就くまでは、宇宙飛行士は憧れで、映画や漫画に出てくる遠い世界の人だと思っていたので、今、そういう方々と仲間として働いているというのは、はじめは不思議な感覚でした。
フフライトディレクタになってからは、仕事でもプライベートでも、より優先順位をつけるくせが身につきました。また、本来は割と遠慮がちな性格なのですが、思ったことを主張できるようになってきました。どちらもフライトディレクタの仕事の性格上、重要なことだからです。あとは、管制官の訓練を受けているときに、指導担当の方から「周囲の人を巻き込む力」を評価してもらえたことがあります。周りに仲間がいてくれることで自分の良さが発揮できるタイプのようです。
FUTURE将来の想い

次の有人宇宙開発を見据えて 実りある成果のために挑戦は続く
今後は、現在の部署で築いた国内外の人脈を大事にしながら、新しい有人探査プログラムがより実りある成果に繋がるよう貢献したいです。そして次の国際有人プログラムを自分自身も楽しみたいと思います。
JAXAの仕事はどこをとっても「宇宙」です。ひとことで「宇宙」と言っても様々な分野や業務があり、それらを広く自身で経験したり、近くで感じたりできるのはJAXAならではだと思います。大きなプロジェクトに関わることができるのもまた醍醐味です。まだ見ぬ未来のプロジェクトに前向きに取り組んでくれる方と、一緒に働きたいと思います。
CAREER PATHキャリアパス
入社してからこれまでのキャリア
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1st year
宇宙輸送ミッション本部 種子島宇宙センターに配属
ロケット打上げ設備の保全(メンテナンス等)を担当する。
H-IIA/Bロケットで日本から宇宙へ運ぶものは、貨物やロケットそのもの含めて、最終的にはすべて種子島に集まる。打上げでは毎回JAXA内外の関係者が現場を訪れるため、多くの方々が関わっている仕事だと身を持って感じた。大きな設備やロケットを間近で見たり、時にはその中に入ったりした。
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4th year
研究開発部門 研究推進部/革新的衛星技術実証グループに配属
小型衛星をロケット相乗りで打上げたい大学等の支援。
環境試験や安全審査等、衛星を打上げる為に必要な作業や手続きが多数あることを学ぶ。また、JAXA外の方々と関わる中、考え方や感じ方の違いを知った。
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6th year
有人宇宙技術部門 有人宇宙技術センターに配属
「きぼう」フライトディレクタ
多くの人たちが関わっているプロジェクトをとりまとめる役割を果たす中で、これまでよりも「自分の発言が及ぼす影響」について考えるようになった。最近は宇宙業界以外の方々が「きぼう」で実施するミッションも増え、部門として支援している。自分のこれまでの経歴が集大成された業務のようにも感じている。

THE OTHER SIDE OF THE MOON私の一面
カラオケやお風呂で歌うとストレス解消になります。あとはカフェ併設の本屋に行って、おいしいコーヒーを飲みながら読書したりします。天気のいい日に外に出たり散歩したりすることも好きです。日の光を浴びながら、今日も地球は気持ちいいなあ、と思ったりして歩いています。