JAXA新卒採用サイト

国際協力を軸に歴史の新たな1ページを刻む

小野田 勝美

1995年入構 一度退職し、2012年再入構
京都大学大学院地球環境学堂博士課程修了
調査国際部
部長

  •  
  •  
  •  
  •  
  •  

REASON入構の理由

環境問題への関心が 宇宙開発の仕事と出会うきっかけに

JAXAの前身の宇宙開発事業団(NASDA)に新卒で入り、衛星が観測したデータを利用する国際的な枠組みの立ち上げに携わりました。その後、一度退職して、大学院に通い、再びJAXAに戻ってきました。実は退職したときは、もう一度JAXAで働くことになるとは必ずしも思っていませんでした。ただ、新卒のときも経験者採用(現:キャリア採用)で入構したときも、環境問題の解決の糸口を見つけたいという思いは同じでした。

振り返ってみると、私が環境問題に関心を持ったのは、大学生の頃に開催されたブラジルのリオ・デ・ジャネイロで国連環境開発会議(通称、地球サミット)がきっかけだったように思います。世界中の首脳が集まり地球環境の保全と持続可能な開発について議論する様子をテレビのニュースや新聞で追っていました。当時、日本では持続可能な開発を実現させるための国際法や条約のあり方を探る研究はあまり行われていませんでしたが、まだ誰もやったことがないことに挑戦してみたくて、卒業論文の研究テーマは、地球サミットで採択された国際条約のひとつである「生物多様性条約」を選びました。卒業後は環境問題に取り組む機関で働きたいと思い、NASDAに入構しました。

地球サミットの開催から10年の節目となる2002年、南アフリカ・ヨハネスブルクで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(通称、ヨハネスブルクサミット)で、日本は持続可能な開発のために日本政府が取るべき行動をまとめた「小泉構想」を発表しました。小泉構想に盛り込まれた「統合地球観測」の策定に私は携わりました。これは各国が協力して人工衛星による観測を行い、得られたデータを共有して研究に使おうと世界に提案するものです。統合地球観測がヨハネスブルクサミットで認められたことで、地球観測衛星の重要性も見直されました。統合地球観測がなければ、温室効果ガスの分布を調べる「いぶき」シリーズや地球観測衛星「だいち」シリーズ、降水を高精度かつ高頻度に観測する全球降水観測(GPM)計画は、現在のようには進んでいなかったかもしれません。それほどのインパクトがある提案だったのです。

衛星データ利用の国際的な枠組みのあり方をより深く研究するために、JAXAを離れて、大学院に進学しました。博士号を取得した後、関連の会議でJAXA職員の皆さんと偶然再会。「衛星データの利活用の推進なら、うちでやったら?」と声をかけていただき、任期付職員として、スイス・ジュネーブの世界気象機関内にある「地球観測に関する政府間会合」(GEO)に派遣されることになりました。

WORKわたしの仕事

世界を舞台に 国際協力を軸に宇宙開発を推進

GEOは統合地球観測の構想を発展させたような組織です。計画を立てて衛星による観測を分担し、得られたデータを加盟国で共有して研究や地球環境政策にかかわる意志決定に役立てることが目的です。私は地球観測計画の国際調整を担当しました。退職前に設立に携わっていたGEOで実際に働けることを嬉しく思いました。国連の専門機関であるWMOの中で様々な国からの同僚と仕事ができたことも貴重な経験となりました。

GEOへ派遣の後、JAXAの経験者採用試験を受け、JAXAに戻りました。自己研鑽などの理由で一度退職した職員を再雇用する「カムバック制度」は、当時はまだありませんでしたが、こうして迎え入れてもらえたことで、結果的に大学院での研究がJAXAでの業務に繋がりました。その後、航空部門企画室と調査国際部での勤務を経て、2018年にJAXAワシントン駐在事務所の所長に就任しました。赴任中の最大のミッションは、やはりアルテミス計画関連の調整でした。これまでの環境問題解決のための国際的な取り組みにかかわる仕事が中心でしたが、国際協力の文脈では有人宇宙探査と通じるところがあります。人類が宇宙に進出していくときに、地上で起きているような環境問題を持ち出してしまわないための枠組みづくりにも関心がありました。

アルテミス計画は2019年10月に発表され、正式に活動が始まりました。2021年12月に当時の岸田文雄首相が発表した、日本人の宇宙飛行士の月面着陸を2020年代後半に目指す計画を実現させるために日本とアメリカの仲立ちを続けました。文化や慣例の違いもあって、たった一通の手紙を書いていただくお願いをするのに苦労したこともありました(笑)。日本の外交の軸でもある日米協力の観点から宇宙開発に携われたのは素晴らしい経験となりました。

  •  
  •  
  •  
  •  
  •  

FUTURE将来の想い

歴史が動く瞬間に立ち合い、固めた決意

2024年4月に日米首脳会談で、2人の日本人宇宙飛行士を月面に着陸させる方針に両政府が合意したときは、歴史が動き出す瞬間を目の当たりにしているようで感慨深い気持ちになりました。その日の夜に機構内の関係者で集まって乾杯したこともいい思い出です。そう遠くない未来に訪れる日米の宇宙飛行士が手に手を取って月面に降り立つ瞬間は、世界中の人びとが固唾を呑んで見守ることでしょう。この日米の歴史的な約束を果たして本当の「歴史」にしていけるように、引き続き気を引き締めて業務にあたっていきます。情熱を持って、何十年も続けられる仕事に出会えたのは、本当に恵まれていることだと思います。

ワシントンから帰国して、現在は調査国際部の部長を務めています。ワシントン駐在事務所で注力していた日米間の協力はもちろんこれからも推進していきますが、調査国際部では国の大小にかかわらず、アジアや中東、南米の国々ともやりとりをしています。その国に見合った利益や恩恵をお互いに与え合える国際協力のあり方を日々模索しています。

CAREER PATHキャリアパス

入構してからこれまでのキャリア

  • 1st year

    計画管理部に配属

    JAXA全体のプログラム管理、共同研究とりまとめを担当した。

  • 3rd year

    国連宇宙部に派遣

    オーストラリア・ウィーンの国連宇宙部に派遣され、UNISPACE IIIと呼ばれる国連の宇宙に関する国際会議開催を担当した。

  • 4th year

    衛星プログラム推進室に配属

    地球観測衛星開発にかかる国際調整全般、ヨハネスブルクサミットで日本政府が提案した「統合地球観測」の策定や地球観測に関する政府間会合の立ち上げに携わった。

  • JAXAを退職し、大学院進学、博士号を取得

    その間、世界気象機関 地球観測に関する政府間会合に派遣

    JAXA退職前に設立に携わった地球観測に関する政府間会合に出向し、衛星による地球観測計画の国際調整を担当した。

    退職から約9年後、JAXAに経験者採用

  • 1st year

    航空部門 企画室に配属

    衝撃波による騒音被害が出ない超音速機や燃費がよく環境にやさしい航空機などの研究を支援した。所属していたのは短い期間だったが、航空部門での取り組みへの理解が深めることができ、後のワシントン駐在員事務所での業務で役立った。

  • 1st year

    調査国際部に配属

    世界の宇宙機関や大学、宇宙開発にかかわる民間企業などで構成される国際宇宙航行連盟(IAF)の運営、欧米との協力を担当した。IAFの運営を担当している間は、本部があるフランス・パリに毎月のように通った。

  • 7th year

    ワシントン駐在員事務所 所長に就任

    米政府機関、アカデミアや産業等との連絡調整、情報収集を担当。特に、日本のアルテミス計画への参画や日本人の宇宙飛行士の月面着陸に向けた交渉や調整などを担い、日米の宇宙協力の体制を構築した。

  • 13th year

    調査国際部 部長に就任(現職)

    ワシントン駐在員事務所での日米協力からさらに視野を広げて、世界各国との国際協力体制の構築を進めている。

THE OTHER SIDE OF THE MOON私の一面

休日におかずの作り置きをまとめて作る時間が癒しです。学生時代から続けているテニスもいいリフレッシュになっています。

  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  

HOW TO APPLY
採用情報