ロケットと航空機の世界に新たな風を吹き込む技術者を目指して
森 彩乃
2018年入構
工学部 航空宇宙工学科
宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム
REASON入構の理由
家族旅行で乗った飛行機に感銘を受けて航空宇宙の道へ
子どもの頃、家族で海外旅行に行くときに飛行機に乗りました。たった数時間乗っているだけで、普段生活している日本とは全く違う世界に連れて行ってくれる飛行機はすごい乗り物だと感動しました。小学生の頃は宇宙にも興味がありました。特に太陽系の惑星に興味があり、夏休みの自由研究のテーマにしていたことを覚えています。
航空や宇宙への興味関心が薄らいでいた時期もありましたが、高校3年生のときに大学のオープンキャンパスで航空宇宙工学科の展示を見ると、幼少期に飛行機や宇宙に憧れていた記憶が蘇ってきました。将来は航空宇宙関連の仕事に就きたいと思い、大学は航空宇宙工学科に進学しました。
大学では、航空機の翼の構造の研究を行いました。JAXAは技術の塊である航空機の研究もしていて、なおかつロケットや人工衛星、有人宇宙飛行など未知の宝庫である宇宙分野のプロジェクトも幅広く手がけていることに魅力を感じて、JAXAを就職先として選びました。
WORKわたしの仕事
打上げ成功へと導く 技術開発と作業の積み重ね
最初に配属された宇宙輸送技術部門 鹿児島宇宙センター 射場技術開発ユニットでは、種子島に赴任して、種子島宇宙センターでH-ⅡA、H-ⅡBロケットの打上げに使う射点設備の維持・管理・運用を行いました。打上げを成功させるために、日々多くの方々が「縁の下の力持ち」としてさまざまな業務に取り組んでいることを、射場技術開発ユニットでの仕事を通じて実感しました。表に出ることはないけれども、陰で支えてくれている多くの人々のおかげでロケットの打上げが成り立っていることを実感することができ、本当に貴重な経験だと思っています。
射場技術開発ユニットでの勤務を経て、入構4年目にH3プロジェクトチームに異動になりました。業務の幅を広げるには、様々な分野に挑戦することも大事ですが、まずは自分のキャリアの軸となるような専門性を持つべきだと私は思っています。当時はまだ「ロケットを知り尽くした」「やり切った」とは思えず、ロケットついての知識や経験をより深められる部署への異動を希望しました。
現在はH3プロジェクトチームで、燃料タンク、タンク同士をつなげる中央部・段間部、打上げ時や飛行中に衛星をまわりの環境から守るフェアリングなどの構造体の開発を担当しています。筑波宇宙センターを拠点としていますが、種子島には頻繁に出張して作業の現場を確認しています。たとえば、工場から種子島宇宙センターに運ばれてくるH3のパーツを合体させていく作業の監督も担当しています。バラバラの状態からロケットが組み上がっていく様子を見ていると、まるで子どもの成長を見守っているような感覚になります。
残念ながら初号機の打上げは失敗してしまいましたが、その後原因究明と対策を経て、2号機、3号機と打上げ成功に関われたことは、非常に貴重な経験でした。ロケットの打上げを成功させるには、本当に小さなひとつ一つの技術開発や着実な作業の積み重ねが欠かせません。それらを積み上げて無事に衛星を軌道投入できたと確認できた瞬間は、やはり言葉に表しがたい感動と達成感を感じられ、次の仕事へのやる気に繋がります。
仕事のなかでも、新しく何かを開発するときは俄然やる気が出ます。H3ロケットは打上げが成功し、開発完了も間近です。その一方で、世界の衛星事業者から選んでいただけるようなロケットにしていくために、H3ロケットのさらなる改良にも取り組んでいます。「新しい方法を取り入れてみよう」「こんな構造に変えてみたらどうか」などと話し合うときはワクワクします。
FUTURE将来の想い
宇宙業界に新しい風を吹かす仕事がしたい
宇宙開発の世界に「新しい風」を吹かせるような仕事がしたいです。やはりアメリカのSpaceX社がこれまでの固定概念を覆して、ロケットのエンジンの再使用を実現させたのは、私にとって衝撃的な出来事でした。まさに宇宙開発の世界に新しい風が吹いた瞬間だったと言えるでしょう。
身近なところで言えば、皆さんが当たり前のように乗っている航空機も、ほんの100年ほど前にライト兄弟が動力飛行に挑戦して、新しい風を吹かせたのが始まりでした。近い将来、宇宙飛行士以外の人も気軽に地球を飛び出し、宇宙に出かけて故郷の地球を振り返る日が来るでしょう。旅行先で新しい価値観や文化、自然に触れたときのワクワク感と同じように、宇宙でもどんな発見や感動があるのか、そして地球を見て、帰ってきたときにどう感じるのかを想像すると、とても楽しみです。私もいつか宇宙に行き、自分の身をもって味わいたいです。多くの人にとって宇宙がもっと身近な存在になるために必要な技術を開発すること、それが私たちの使命だと考えています。個人的には、旅立つ人が宇宙に出かける前に「世界で最も美しい射場」と呼ばれている種子島で地球の美しさに触れてから、宇宙に出発できたら素敵だなと思っています。
「好きこそ物の上手なれ」という言葉があるように、航空機やロケットが好きだからこそ、苦しいことがあっても乗り越えて来られました。宇宙や航空が好きな方、新しいことに日々チャレンジしていくのが好きな方はJAXAでの仕事を楽しめるでしょう。
CAREER PATHキャリアパス
入構してからこれまでのキャリア
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1st year
宇宙輸送技術部門 鹿児島宇宙センター 射場技術開発ユニットに配属
種子島宇宙センターにおいて、H-ⅡA、H-ⅡBロケットの打上げに使う射点の維持・管理・運用を担当した。ロケットの打上げやそれを支える大勢の人々を間近で見ているうちに、ロケットの魅力に惹かれていった。
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4th year
宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチームに配属(現職)
H3ロケットの構造体の開発と運用を担当。H3ロケットの改良の検討にも参加している。
THE OTHER SIDE OF THE MOON私の一面
休日は近くのプールで泳いだり、近所をお散歩したり、まったりと過ごしています。睡眠もたっぷり取ります。友達や家族と美味しいご飯を食べたり旅行に行ったりしてリフレッシュするのも大好きです。疲れが溜まったときは実家の犬に会って癒されています。