

人類の世界を広げる自動ドッキング技術の獲得を目指して
前田 真紀
1995年入構
家政学部家政理学科一部物理系卒
有人宇宙技術部門 自動ドッキング技術実証プロジェクトチーム
プロジェクトマネージャ
REASON入構の理由

挑戦しなければ始まらない 友人の言葉が後押しに
白河天体観測所の天文台長の藤井旭さんが愛犬チロとのエピソードを綴った『星になったチロ』を子どもの頃に読んだことをきっかけに宇宙に興味を持ちました。ハレー彗星が地球に接近したときには、望遠鏡が欲しいと親にねだったことを覚えています。
大学は、少しでも宇宙に近い学問を学べる学部・学科に進学したくて、成績が届く学科のなかから物理学科を選んで進学しました。インカレサークルのOBがJAXA(当時NASDA)で働いていることを知ったときは、JAXAが身近に感じられました。宇宙にかかわる仕事に憧れはありましたが、実ははじめはJAXAの採用募集に応募しようとは思っていませんでした。求人情報が集まっている大学の資料室にJAXAの求人情報が掲示されているのを友人が教えてくれましたが、私なんかはどうせ受からないと諦めていたのです。そんなとき友人がかけてくれた「受けてみなくちゃわからないよ。そんなに宇宙が好きなのに、なんで受けないの?」という言葉に背中を押されてJAXAに応募しました。
WORKわたしの仕事

チームメンバーの笑顔がやりがいに
「きぼう」日本実験棟の運用管制官を経て、国際宇宙ステーションに補給物資を届ける宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の運用に参加しました。こうのとりはISSの一歩手前まで接近すると、ISSに滞在している宇宙飛行士がロボットアームでつかみ、宇宙飛行士の操作によりISSと結合されます。きぼうの運用をマンションの一室の電源や空調などの管理に例えるなら、こうのとりの運用はマンションにやってくる宅配便の車を運転するようなものです。しかも、そのマンションは秒速7kmという超高速で飛行しています。厳しい訓練を経て認定されたきぼうの運用管制官の仕事よりも、さらに幅広い知識を求められる仕事でした。こうのとりがロボットアームでつかまれるところの運用を担当した際は、これまでにない大きなプレッシャーを感じましたが、「今やるべきことは何か?」と自分に問い続け、集中を保ちました。
現在は、将来の探査や有人宇宙活動を支えるため、ロボットアームに頼らずに宇宙ステーションへ自動でドッキングできる技術の実証プロジェクトを立ち上げ、プロジェクトマネージャを務めています。たとえば、アルテミス計画の一環で構築が計画されている、月近傍ステーション「Gateway」には、宇宙飛行士が滞在しない期間も出てくるとされています。自動ドッキング技術を使うことで、宇宙飛行士が到着する前に必要な物資を届けておくことも可能になります。日本がこの技術を獲得できれば「世界」がさらに広がります。
新たな課題に直面し、逃げることなく頭をフル回転させる毎日はつらいこともありますが、やりがいにつながっています。「ミッションが成功したときのみんなの笑顔」が私にとっての何よりのやりがいなのかもしれません。
FUTURE将来の想い

必要なのは高い壁も楽しんで乗り越えていく気概
現在の目標は、自動ドッキング技術の実証プロジェクトを成功させることです。プロジェクトチームのみんなや関係者の皆さんの笑顔を見るために全力を尽くしています。日本の宇宙開発が新しいステージに進むために、私の経験を役立てる方法を見つけていきたいです。そのために学び続けていきます。
宇宙に夢と希望を抱く人は多いと思いますが、仕事は楽しいことばかりではありません。高い壁にぶつかっても、それを楽しめる気概が必要です。最初は難しいかもしれませんが、逃げずに悩み抜き、課題と向き合えば必ずゴールが見えてきます。宇宙産業のすそ野が大きく広がりつつある今ですが、JAXAでしかできない仕事はまだまだたくさんあります。日本の宇宙開発をさらに前に大きく広げるために、この素敵な仕事を皆さんと一緒にできることを楽しみにしています。
CAREER PATHキャリアパス
入構してからこれまでのキャリア
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1st year
追跡管制部中央追跡管制所データ処理課に配属
人工衛星の軌道計算をみっちり修行した。学生時代は宇宙とは無縁だったが、この期間で学んだことが今の技術の基礎のひとつになっている。
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10th year
宇宙基幹システム本部セントリフュージプロジェクトチームに配属
ISSに設置されている人工的に重力を発生させる装置「セントリフュージ」の開発プロジェクトに参加した。これが初めてのNASAとの仕事であり、英語ができなさすぎて落ち込み、英会話教室に通い始めることになった。技術的にも難易度が高いうえに、業務のスピード感もこれまでとは桁違い。脳がオーバーヒートしそうな日々を送った。
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12th year
宇宙基幹システム本部 JEM運用プロジェクトに配属
2006年「きぼう」日本実験棟のフライトコントローラ候補として訓練開始、2007年に認定を受ける。宇宙飛行士含むISSでの日々の運用スケジュールを組み立てる仕事を担った。旅行のプランを立てるのが好きな私にとっては天職だった。2008年のJEM打上げを機に、翌2009年に迫っていた宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の運用に関する運用設計と訓練を立ち上げる。あとにも先にも一番忙しかった2年間。
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16th year
有人宇宙環境利用ミッション本部 HTVプロジェクトチームに配属
HTVの運用管制業務の移管とともに所属も変更となった。こうのとり2号機の打上げ前にフライトディレクタとして認定を受け、ISSへの最終接近の手前にある大事な運用を任された。
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27th year
自動ドッキング技術実証プロジェクトチームを立ち上げ
自動ドッキングの技術を獲得する実証ミッションを行う新しいプロジェクトを立ち上げた。「ピカイチ」の技術を持つプロジェクトメンバーに支えられながら試行錯誤の毎日を送っている。

THE OTHER SIDE OF THE MOON私の一面
週末は平日に撮り溜めたドラマをまとめて見ています。ドラマは全般的に好きですが、ホラー系だけはどうも苦手です。ずっと追いかけているミュージシャンのコンサートがあるときは、地方にも遠征しています。