宇宙への思いの先で見つけた自分だけの強み
飯嶋 竜司
2019年入構
数理物質科学研究科修了
航空技術部門航空機用メガワット級電動ハイブリッド推進システム技術実証プリプロジェクトチーム
REASON入構の理由
有人月面ローバーが導いてくれた「電気のプロ」の道
物心がついた頃からロケットや飛行機が好きでした。なんて綺麗な乗り物なのだろう、自分もロケットや飛行機に乗ってどこか未知の世界へ冒険に行ってみたいと思いながら図鑑を眺めていました。筑波宇宙センターや成田空港に隣接する航空科学博物館によく連れていってもらいました。もしJAXA職員のなかで子どもの頃に筑波宇宙センターに来た回数を競うなら、私が一番になるでしょう。そのくらいロケットと飛行機に夢中でした。
小学生になるとロボットに興味を持ちました。ロボットを製作して競わせるロボットコンテスト(ロボコン)に挑戦したくて、中学卒業後は高等専門学校(高専)に進学し、放課後は寮の消灯までロボコンに向けてロボット制作に熱中しました。
思い返せばロボコンで得た仲間たちと協力して一つのものを作る楽しさと大変さは、その後の進路やJAXAの業務の様々なところに活きています。
一方、将来への不安もありました。当時宇宙や航空の仕事に携わるには機械系の勉強が必要だと思っていました。高専では成績の関係で電気系の学科に進んだため、電気系の勉強の楽しさはありつつも航空宇宙業界への道は遠のいたなと感じておりました。
転機となったのは、高専の卒業研究で電気自動車レースに出場するために調べものをしていて、アポロ計画の有人月面ローバーの写真を見たことです。「空気がない宇宙ではエネルギーの中心は電気になる。」この時、電気の分野を極めることが航空宇宙業界に携わることにつながると確信しました。これをきっかけに高専卒業後は大学院に進学し、電気自動車や鉄道を動かす大きな電力を半導体で制御するパワーエレクトロニクスという分野の研究に取り組み、博士号を取得しました。大学院を通じて得られた専門性やネットワークは今の業務を支える大きな糧となっています。
WORKわたしの仕事
多くの方々と協力し 新しい価値を社会に送り出す
現在私はJAXA航空技術部門の航空機用メガワット級電動ハイブリッド推進システム技術実証(MEGAWATT)プリプロジェクトチームに所属しています。今日、航空機が排出する温室効果ガスの削減が世界的に求められています。このチームでは航空機が排出する温室効果ガスの削減方法として、航空機の推進系にモータ等の電動要素を取り入れる「航空機電動化」に注目、その重要技術を実証するプロジェクトの準備を進めています。
チームの名称に「メガワット」とあるように、航空機の推進力を担うための電力は、非常に大きく、電気自動車数十台分に匹敵します。私はパワーエレクトロニクスに関する専門性を活かして、機体上で大電力を制御する技術を航空機に搭載するための道筋をつくる実証試験の準備を担当しています。
MEGAWATTでの活動の醍醐味は、JAXAだからできる大規模な実験やその成果を社会に送り出すことに携われることです。たとえば、航空機が飛んでいる状態を模擬する風洞試験では、建物のように強大な設備を用いて、さまざまな分野の方々と協力して実験を行います。限られたリソースの中で成果を最大化するには、技術だけでなくマネジメントや法律などさまざまな知識が求められます。大変ことも多いですが、さまざまな方々と協力して目標を成し遂げることは、学生時代に打ち込んだロボコンの面白さとも重なります。
航空宇宙=最先端と感じられるかもしれませんが、信頼性を第一とする航空宇宙分野では、独自に進歩しつつも地上では数世代前の技術が使われることが珍しくありません。一方で航空機の電動化では、パワーエレクトロニクスをはじめ地上で育まれた技術を新たに取り入れる必要があります。大規模なプロジェクトを通じて、地上の技術が航空宇宙分野に適用できることを実証し、新たな産業につながることを社会に示すことはJAXAだからこそできる仕事だと感じます。
FUTURE将来の想い
「宇宙が好き」を超えた先へ
私が学び、地上の電気自動車や太陽光発電を支えるパワーエレクトロニクス技術の利用の先駆けは、人工衛星の電源と言われています。宇宙への挑戦で得られた技術が地球の課題解決に貢献しているよい例だと思います。私は、地上で育まれたこの技術が再び空や宇宙での活動の幅を広げ、新しい発見や地上の豊かな社会の実現につながると信じています。これからもエネルギーを制御する技術を通じて、人類の世界を拡げるための航空機、宇宙機の実現に携わっていきたいです。
皆さんに伝えたいことは、自身が学んだことに「宇宙」や「航空」の文字が無いからと、航空宇宙業界への挑戦を諦めないでほしいということです。私は宇宙が大好きでしたが、博士課程まで学んだ電気の分野に宇宙や航空という文字はありませんでした。しかし、電気は航空宇宙の発展に欠かせない技術になっています。大切なことは「宇宙が好き」の先、宇宙航空を通じてどんな世界を作っていきたいか、そのために今まで積み上げたことがどうつながっていくのか、自身の言葉で形に出来ることだと思います。JAXAの活動は様々な分野の人々の協力で成り立っています。皆さんと力を合わせて、一緒にJAXAで働くことができるのを楽しみにしています。
CAREER PATHキャリアパス
入構してからこれまでのキャリア
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1st year
航空技術部門 MEGAWATTプリプロジェクトチームに配属(現職)
高専と大学院で学んできたパワーエレクトロニクスの技術を活かして、電動航空機の研究開発に携わっている。一度きりの実験をするときの心境は、どんなに準備をしてもワクワクと緊張が半分ずつ。
THE OTHER SIDE OF THE MOON私の一面
仕事が大好きな私ですが、仕事のオン・オフはしっかり切り替えるタイプです。家ではリラックスして英気を養い、家族と過ごす時間を大切にしています。