衛星データの価値を最大限に発揮するために
江藤 由貴
2021年入構
理工学研究科 物理・宇宙専攻修了
第一宇宙技術部門 衛星利用運用センター
REASON入構の理由
日々蓄積されていく膨大なデータを使いこなすには
小さい頃から漠然と宇宙に興味がありました。高校生のときにJAXAのことを知って、将来は宇宙にかかわる仕事をやりたいと思うようになりました。その一方で、医師になることにも憧れがありました。どちらの道に進むべきか悩みましたが、未知を探求したいという思いが強かったので、大学と大学院では天文学を専攻し、「星の赤ちゃん」の研究をしました。
大学院在学中は南米・チリに留学して「アルマ望遠鏡」の観測データを解析する研究を行いました。アルマ望遠鏡とは宇宙から届く電波を観測して、星の材料となる塵やガスの様子を調べることができる望遠鏡です。私は飽き性なので天文学を軸に、工学も勉強してみようと思い、アルマ望遠鏡の観測精度を向上させる研究も行いました。
天文学の研究を通じて知ったのは、望遠鏡の観測データのアーカイブはたくさんあるのに対して、それを使って研究する人材が足りていないということです。せっかくあるデータを持て余してしまっているのは、天文学の世界に限らないことにも気付きました。日々蓄積されていくビッグデータも、もっと上手く使いこなすことができるかもしれない。そう考えて、様々なデータを組み合わせて使いこなすデータサイエンティストのような仕事に就こうと決めました。
JAXAを就職先として選んだのは、人工衛星が観測するデータの利活用の推進なら、天文学の研究で学んだことを活かせるだろうと思ったからです。テレワークとフルフレックスで働ける制度があることや女性職員の比率が比較的高く、ロールモデルとなる先輩が多くいらっしゃると思ったことも入構の決め手となりました。
WORKわたしの仕事
今も心に刻む 恩師の言葉
現在は衛星利用運用センターで、衛星データの利活用を推進することがメインの業務です。衛星データの取得、処理、利用の研究を行う地球観測衛星センターが生成する衛星データプロダクトと利用ユーザーを繋ぐ営業の役割を担っています。学生時代に電波天文学の研究をしていたことから、私は特に電波を地表に照射してはね返ってきた電波を受信して地表の様子を捉える「SAR衛星」に分類される、だいち2号と4号のデータを担当しています。
衛星データと電波天文学の観測データはどちらも宇宙とかかわりがありますし、電波を受信して画像化する技術を使っているところは共有していますが、データからわかる情報は全くの別物です。衛星データは地表を広範囲に捉えて何が起きているのかを知るために使われますが、電波天文学の観測データで見るのは星の材料です。大学時代の研究そのものよりも、研究を通じて身に付けた考え方や習慣のほうが今の業務に役立っていると感じます。たとえば、留学中に先生からの質問に答えられず「もっと勉強してくればよかった」と言ったときに、先生がかけてくれた「学ぶには遅いなんてことはない」という言葉は常に心に刻んでいます。仕事をしていると毎日のようにわからないことが出てきますが、そのままにせずに勉強する習慣に助けられています。
衛星利用運用センターでは、毎日コツコツと積み重ねていく仕事が多いように思います。ですから、衛星プロジェクトの打上げのような大きな節目やイベントはほとんどありませんが、部署内で衛星データを解析したデータをユーザーに使っていただけたときやデータの利用に向けた次のステップが見えたとき、そしてユーザーから「衛星ってこんなに使えるんですね」と言っていただけた瞬間は大きなやりがいを感じます。
FUTURE将来の想い
国際協力や日本の技術の発展に貢献したい
仕事を通じて、宇宙開発における国際協力や日本の技術の発展に貢献していきたいです。JAXAはロケットや衛星、有人宇宙飛行など、宇宙開発全体に横断的に取り組める日本で唯一の機関であり、産業を盛り上げて日本の「力」を育てる役割も担っていると思います。JAXAに入構してから、業界を俯瞰して物ごとを考えるようになりました。
個人的には、まだ人類が到達していない太陽系外の惑星を周回する観測衛星を送れたらと考えるとワクワクします。今の技術では実現は難しいですが、無邪気な子ども心を忘れずに持ち続けたいです。
夢や目標が高く見えても、自分の強みを客観的に捉え、自分を信じて行動を続ければ叶えられると私は思っています。もし、ここまで記事を読んでくださった方が同じ宇宙開発のフィールドで実現したいことがあるなら、実現に向けて一緒に進んで行けると嬉しいです。
CAREER PATHキャリアパス
入構してからこれまでのキャリア
-
1st year
第一宇宙技術部門 衛星利用運用センターに配属(現職)
だいち2号や4号など、SAR衛星の観測データ利活用の推進を行う。産学官による衛星地球観測のコミュニティ「衛星地球観測コンソーシアム(COSEO)」にて、広く衛星データを普及させることを目的としたイベントの運営等にも従事している。
THE OTHER SIDE OF THE MOON私の一面
健康的に過ごすことがモットーなので、仕事終わりや休日は美味しいご飯をつくることと筋トレに邁進しています。指輪型の睡眠トラッカーを数年前からつけていますが、計測したデータはまだ地球観測衛星のデータに紐づけて有効活用できていません(笑)。海外ドラマが好きで、休日に夜更かしして一気見するという健康オタクにあるまじき行動に出ることも……。