|
みなさんは、「レールガン」という言葉を聞いた事がありますか?
レールガンは電磁力で軽い物体を高速度に加速させる電磁飛翔体加速装置(Electromagnetic Launcher:EML)のひとつで、EMLの中で最も高速度を出せる装置です。EMLの開発は戦前より行なわれていて、古くは1900年初めBirkelandと言う人が電気砲の名前で研究を行なっていました。しかし、本格的なEML開発が始まったのは1980年以降ですが、そのきっかけとなったのは、オーストラリア国立大学の研究グループによるレールガン開発でした。宇宙研でも1980年代末より相模原キャンパス特殊実験棟プラズマ実験室で「HYPAC」とネーミングされたレールガンの開発をスタートさせ、現在までに7.8km/sという高速度の達成に成功しています。(この7.8km/sの速度はレールガン装置で得られた速度としては世界でもトップクラスの速度です)

写真1
写真1がレールガン開発を行なっているプラズマ実験室の全景で、手前にレールガン装置が見えます。

写真2
写真2には「HYPAC」レールガン本体が撮影されていますが、鉄製のVブロックで被われた中心部に銅製のレールが2本見えています。

写真3
写真3は「HYPAC」レールガン発射の瞬間を撮影したもので、レールガン発射時には飛翔体だけでなく高温・高圧のガスもレールガンより打ち出されます。

写真4
写真4は「HYPAC」レールガンで発射された1グラムのポリカーボネイト(プラスチックの1種)飛翔体が約6km/sでアルミニューム板に衝突して出来たクレーターの断面を示しています。これは、実験後アルミニューム板をクレーター中心部で切断したものを撮影したものですが、アルミニューム板後部には衝撃波で破壊された小さな傷跡が見えます。

図1
図1は「HYPAC」レールガンの構成図であります。コンデンサー容量6mF、定格充電エネルギー300kJのコンデンサーバンクに蓄えられた電気エネルギーは、ギャップ・スイッチが導通する事によりパルストランスを経てレールガン本体に導かれ最大900kAもの電流をレールガンに流します。「HYPAC」レールガンは図1及び写真2より分かりますように2本の銅レールより構成されていて、その2本のレールの間を飛翔体が移動出来るようになっていますが、飛翔体加速力はレール電流の二乗に比例するので、「HYPAC」レールガンではパルストランスを使用して電流増幅を行っています。

図2
図2はコンデンサーバンクの充電エネルギーを変化させた時の飛翔体速度をプロットしたものです。使用された飛翔体の質量は大体1グラムで最大速度は充電エネルギーが380kJの時に得られましたが、その速度は前にも述べましたが、7.8km/sです。
「HYPAC」レールガンを開発しているプラズマ実験室で忘れてならないのは本実験室が全国大学共同利用施設として運営されている実験室であると言う事です。プラズマ実験室では多くの共同利用研究者が「HYPAC」レールガンを使用して高速度飛翔体の衝突現象を利用した様々な科学実験を実施しています。
今までに実施された科学実験の科学成果は「レールガン実験成果報告」と言う題名の報告集として出版されています。その中より1,2の科学実験を紹介しますと、1)スペースデブリに対するスペースステーション壁の防御に関する衝突実験、2)フラーレンの名前で知られているC60に衝撃圧力を与えて、そのサッカーボール結晶構造に変化を与える実験等があります。詳しく御知りになりたい方は佐々教授(sasaki@newslan.isas.jaxa.jp)もしくは矢守技官(yamori@newslan.isas.jaxa.jp)までお問い合わせ下さい。
平成16年度採択課題一覧
|