リモートセンシングデータを用いたアンテナ見通し解析手法の開発

公開日:2020/07/17 最終更新日:2020/07/17

施設部では、DSM※1などのリモートセンシングデータを利用した地形解析(見通し解析)の手法を開発し、アンテナ新規整備等の計画段階における立地検討等に活用しています。

解析に利用するデータは、国土地理院がアーカイブする基盤地図情報数値標高モデルや市販の衛星プロダクツのほか、ドローンによる空撮を行ってデータを取得・利用することも可能です。

DSMを青から緑のグラデーションで表示したもの(種子島宇宙センター大崎地区)

北西方向から射点を望んだ鳥瞰画像(種子島宇宙センター大崎地区)

※1 DSM(Digital Surface Model):数値表層モデルのこと。地表面とその上にある地物(建物・樹木等)表面の平面位置と標高からなる三次元データ。

「アンテナ見通し解析」とは

アンテナと衛星は電波で通信しており、電波が建物や樹木などで遮られると通信ができなくなります。このため支障となる樹木は伐採する必要がありますが、環境保護や森林育成の観点から、伐採範囲は必要最小限でなければなりません。
また、伐採に際しては許可や補償が必要となったり、JAXAが土地を取得する場合もあります。いずれにしても見通し解析によって必要最小限となる伐採範囲を精度良く解析することが求められています。

美笹深宇宙探査用地上局における森林伐採範囲の検討

長野県佐久市に整備した美笹新宇宙探査用地上局(以下、美笹地区)の樹木伐採に際しても、見通し解析を行いました。

ドローン撮影

より高分解能で最新のDSMを取得するため、ドローンで美笹地区周辺を撮影しました。

ドローンから撮影した美笹地区(2016年)

ドローンから撮影した画像データから生成したDSMを3D表示したもの

解析結果の可視化

解析と結果の表示にはGIS(Geographic Information System: 地理情報システム)を用います。解析によって必要最小限の伐採範囲を確定しました。

薄いピンク色の部分がアンテナ見通し線(仰角7°)の支障となる樹木等

DSMとアンテナ見通し線(灰色)を3D表示したもの。見通し線より上部の赤い部分が支障となる樹木等。伐採可能なのは借り受けている土地内のみ。見通し線上部のみの一部伐採は困難であり、安全に作業するため根元での伐採となることを踏まえて実際の伐採範囲を検討。

緑色の部分が実際の伐採範囲。当該森林は国有林であり、環境保護の観点から伐採は最小限とすることが求められた。特に、南東側の森林によるスカイライン干渉が性能低下に繋がる可能性があることからこの範囲に限定して伐採を行った。

おわりに

DSMやGISの活用により、様々な見通し解析業務を迅速かつ精度良く実施すること可能になりました。この他、施設の設計・整備及び維持運用の各フェーズにおいてもDSM等リモートセンシングデータの活用を積極的に進めています。

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