横川 譲

航空機の騒音低減技術を確立し、次世代航空機の開発に貢献したい

風切音を消す研究者

もともとF1が好きで、車体にステッカーを1枚貼るだけで空気抵抗が増えることがあるという話を聞いて興味を持ったのをきっかけに、大学では流体力学や空力騒音の研究をしていました。主に取り組んだのは、航空機、自動車、列車などの表面に溝があると、そこから強い音が出ますが、それをいかにして消すかという研究です。研究を通じてJAXA(当時のNAL・航空宇宙技術研究所)の方と交流があり、その研究レベルや設備の性能が大学とは比べものにならないぐらい高いことを知って、「ここで働いてみたい」と考えるようになりました。

航空機の騒音低減技術の確立を目指す

航空機には二酸化炭素の排出や燃費以外にも、騒音の問題があります。最近ではジェットエンジンが静かになりつつある一方で、着陸の際に翼や車輪が出す風切音(物体に空気が当たることにより発生する騒音)が課題として残っています。私の所属するFQUROH(フクロウ)プロジェクトは、航空機の機体から出る風切音を消すための技術を実際の飛行試験で実証することが目的です。FQUROHは「機体騒音低減技術の飛行実証:Flight demonstration of Quiet technology to Reduce nOise from High-lift configurations」の略称ですが、動物のフクロウが静かに飛ぶところにも掛けているんです。

最近ではスーパーコンピュータを使って解析的に風切音の発生原因や伝わり方を観察することが可能になっています。FQUROHでは、その解析技術により風切音が発生しにくい形状を設計し、低減効果を風洞試験で確認し、さらに航空機を低騒音形状に改造し、実際に飛行させて低減技術を実証します。これまで、JAXAの実験用航空機「飛翔」を使った実証試験の結果、騒音低減効果が認められていて、今後は国産旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)でも実証試験を行う予定です。

飛行実証試験では、地上に並べた約200本のマイクロホンにより機体のどこからどういう音が出ているかを計測するのですが、それを広い空港内に敷設するのは一苦労です。またパイロットには狙いどおりのコースを安全に飛んでもらうため、丁寧に説明をして、信頼関係を築かねばなりません。試験中は天候にも大きく左右されます。雨や強風の時には計測ができないので、「飛翔」を使用した実証試験では、機体改造を始めてから騒音計測が完了するまで3~4ヶ月、計測だけでも1ヶ月かかりました。私は現場の指揮を執ることも多いので、トランシーバーを持って空港内を走り回ることもしばしば。このように苦労も多いですが、得られた成果はJAXA内外の研究者とシェアすることができるため、やりがいも大きいですね。

豊富な課題意識とアイデアを持つ者には最適な研究環境

航空技術部門では、自分の裁量で仕事を進められる範囲が大きいと感じています。課題意識やアイデアを豊富に持っていて、研究開発をしてみたいという人には非常に良い環境だといえるのではないでしょうか。

これからの目標は、開発した低騒音化技術を応用して、人間・社会に今よりも航空輸送を融合させられる次世代の国産航空機開発に貢献することです。国内の企業が航空機を作ろうとしたときに、まずはJAXAに相談に来てくれれば課題を解決できるような機関になることが理想的ですね。

JAXAを目指す学生への一言メッセージ

空想的でもいいので、今の世の中にイメージ図すらないような30年後の宇宙技術、航空技術、或いはそれらが活用される社会を創造してほしいです。

プロフィール

2002年に旧NALに入社。大型低速風洞で業務を開始し、その後MRJ開発に伴う共同研究を行うチームに異動。以降、航空機の空力と機体騒音に関する風洞試験と飛行試験を担当。2013年度にはドイツのアーヘン工科大に客員研究員として滞在。また、米国バージニア工科大やドイツDLRにおいても風洞試験を実施。趣味は読書とクラフトビール。仕事の忙しさを忘れられる妻とのお茶の時間を大切にしている。東京都調布市出身。

1日の業務の流れ

09:00出社、メール確認、1日の予定の整理
10:00チームメンバーと進捗や進め方の打ち合わせ
12:15自分のデスクでお弁当
13:00データ分析、評価や計測機器テスト
16:00試験報告書や計画書の作成
19:00風洞試験模型等の仕様書作成
20:00退社

※所属部署・掲載内容は取材当時による

部門紹介 航空技術部門

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